多角的ゲームレビュー

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名作推理アクション「L.A.ノワール」が日本人にはあんまりおすすめできない理由を解説

この記事でネタバレはありません。

ゲーム概要

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忠実に再現された1947年のロサンゼルスを舞台に、プレイヤーはロサンゼルス市警の刑事となり、各部署で事件に潜む謎に挑んでいく。(L.A.ノワール - Wikipedia)

タイトルL.A.ノワール
ジャンル推理・オープンワールド・アクションアドベンチャー
開発元Team Bondi(オーストラリア)
筆者のプレイ環境PS4
個人的評価C (おすすめできない)

総評

申し訳ないが筆者はプレイに耐えかねて途中で投げ出してしまった。

本作の名誉のために弁護すると、このゲームは客観的に見ると名作の部類に入るものであり、海外での評価は高かった(metacriticでの評価では100点満点中80点くらい)。原語(英語)なら楽しめるのかもしれない(後述)。

ただ、それを差し引いても普通に操作性などの面で難が多い作品だと感じた。

評価点

1947年のロサンゼルスの雰囲気はそれっぽく、ゲーム全体の雰囲気は洒落ている。

問題点

ミッション進行不可になるバグ

本作はオープンワールドのシステムを採用している。そのため捜査ミッション中であってもロケーション間の移動の自由度は高く、どの順番でロケーションに行っても良いはず・・・なのだが、想定されていない順番でロケーションを訪れた場合、フラグが立たず進行が不可になるというお粗末なバグが存在する。

オープンワールドである必要性の無さ

ゲームシステム的にオープンワールドにする必要性が薄い。むしろ無駄な自由度の高さにより、前述したような進行不可になるバグの温床になっている感すらある。自由度が高いと行ってもLAの街をクラシックカーでドライブできるくらいである。主人公は警官なので当然、GTAのように銃をぶっ放したりできるわけでもない。

分かりにくい尋問システム

容疑者や情報提供者を尋問する際、発言に対して「信じる」「疑う」「反証する」(反証できる証拠がある場合)から選べるのだが、発言のどの部分に対してそのアクションを取るのかよく分からない。攻略サイトを見ても、なぜその選択肢が「正解」になるのかピンと来ないものばかり。

突きつける証拠がない(ミッション中、それに対応した証拠が存在しない場合もある)場合は必然的に「信じる」「疑う」を選ぶことになる。顔の表情からある程度推測できるものの、ポーカーフェイスで嘘のうまい奴がたまにいるという無駄にリアルなシステムのせいで総じて運ゲー的であり、その2択を外して「不正解」になるのは納得いかない。

不十分な日本語ローカライズ

登場人物の身元を調べるときに運転免許証などの書類を調べる必要があるが、英語表記のまま描画されているため、意味を知るには別途画面の下に表示される日本語字幕を参照する必要がある。免許証とかならまだ良いのだが、資料によっては大量の英語で書かれた情報量の多い資料が存在する。その場合はカーソル(というか主人公の指)を当てないと翻訳が表示されず、しかもゲーム全体の問題として、カーソルがどこにいるのかが非常に分かりにくい。いちいち英語→日本語に翻訳するのではなく、資料オブジェクトは全部最初から日本語で描画して欲しかった。

全体的に操作性とテンポが悪い

手帳

頻繁に見返すことになる「手帳」では項目を選ぶときにカーソル的なものが表示されず、どこをフォーカスしているのか分かりにくい。一応カーソルの代わりらしき鉛筆は表示されるのだが、鉛筆の先がどこを指しているのかやっぱり分かりにくい。せめて文字をハイライトするとかして欲しい。

情報収集フェーズ

○ボタンで対象物を詳しく見ることができるのだが、主人公が何にフォーカスしているのか分かりにくい。対象物が接近しているところだと、目当てのものではないものを調べてしまってイライラしてしまう。Apexみたいに、フォーカスを当てたオブジェクトにポップアップ表示を出して欲しい。

淡々と進む捜査ミッション

全体的に物語は捜査ミッション単位で淡々と進んでいく。捜査する事件もさほどドラマティックで面白いものではない。この点は良くも悪くも絶妙なリアリティがあるかもしれない。(筆者は多分中盤まで行かずに辞めてしまったので、もしかしたら後半面白くなるのかもしれないが。。)

【ネタバレなし】「デトロイト ビカム ヒューマン」 (Detroit: Become Human) のレビュー

この記事でネタバレはありません。

ゲーム概要

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それは命か、それともモノか。

2038年、デトロイト市。人工知能やロボット工学が高度に発展を遂げた、アンドロイド産業の都。そこでは人工知能やロボット工学が高度に発展を遂げた結果、人類のような知性を持ち、外見上もほぼ見分けがつかない先進的なアンドロイドが製造されるようになっていた。人間と同等の作業をこなせる便利な「道具」としてさまざまな労働を担い、社会に不可欠な存在となったアンドロイド。しかし、それが生み出した豊かさや便利さの一方で、職を奪われた人々による反アンドロイド感情が高まるなど、社会には新たな軋轢も生み出されていた。

そんな中、裕福な家庭に所有されていた家庭用アンドロイドが所有者を殺害し、娘を人質に立てこもるという事件が発生。犯人は、本来アンドロイドが持つはずのない自我や感情を持って行動する個体「変異体」だった。この事件をきっかけに、アンドロイドと人類の運命は後戻りのできない道を進みはじめる。

人類史上最も便利な「道具」として生み出され、ショーウィンドウに「モノ」として陳列されているアンドロイドたち。そこに生まれた「意思」や「感情」らしきものとは何なのか。それらは、はたして命なのか、モノなのか。プレイヤーは、「カーラ」、「コナー」、「マーカス」という3体のアンドロイドを通して、幾度となくその問いを考えることになる。

Detroit: Become Human Value Selection

タイトルデトロイト ビカム ヒューマン
(Detroit: Become Human)
ジャンルオープンシナリオ・アドベンチャー
開発元クアンティック・ドリーム(フランス)
筆者のプレイ環境PS4 / 英語音声+日本語字幕
個人的評価A (自信を持っておすすめできる)

総評

ヒューマンドラマ好き・SF好きには特におすすめできる傑作。

緻密に作り込まれたシナリオと世界観、洗練されたゲームデザインモーションキャプチャーを利用したキャラクターの感情表現など、全てにおいてクオリティが高い。

このゲームが良作であることは耳にしていたが、「ムービーゲーか…、アクション性の無いゲームは退屈に違いない」と思って購入をためらっていた。しかし、実際にプレイしてみると「ムービーゲー」の悪い先入観は完全に誤っていたと気づくことになった。

良いところ・好きなところ

緻密に作り込まれたシナリオと世界観

いわゆるマルチエンディングゲームになっており、プレイヤーの選択によって物語は複雑に分岐する。プレイヤーの判断によっては主人公キャラクターがあっさり死亡してしまうこともある。

3人の主人公の選択は互いに影響し合うようになっており、最良のエンディングを観るためには他の主人公のストーリーへの影響も考えた上での選択が必要となる。

重要な分岐確定シーン以外でのユーザーのアクション(自由に探索できる場面で銃を見つけると、その後のシーンで銃を使うことができるなど)も矛盾のない形でしっかり反映される。これによりプレイヤーは真剣に選択肢を考えることが重要となり、没入感の高いプレイングが楽しめるようになっている。

洗練されたゲームデザイン

QTEによる選択システム
本ゲームではQTE(クイック・タイム・イベント、ボタンを制限時間内に押してアクションや判断を行う方式)が採用されており、「没入的にプレイする映画」といった感じになっている。

R2による状況スキャン
また、フリー操作中などではR2ボタンを押して周囲の状況をスキャンし調べる対象をわかりやすく表示できる。アンドロイドという設定を活かした自然でストレスのないプレイ体験が可能となっている。このシステムのおかげで、謎解きで行き詰まることはない。

ゲームオーバーが存在しないので(判断を誤って主人公が死んでしまうことはあるが)、「詰む」ことなく物語を駆け抜けることができる。QTEは設定で簡単モードにすることができるので、アクションゲームが苦手な人にもおすすめ。

ドラマティックな演出を担うBGM

www.youtube.com 3人の主人公(コナー、カーラ、マーカス)それぞれに対して一人ずつ専門の作曲家が担当した。それぞれのキャラクターの個性が引き立っており、かつ一貫性が感じられる。

マーカス担当の作曲家ジョン・ピサノはインタビュー映像で次のように語っている。(上の動画の4:35

最初に話を聞いた時は「3種類の音楽が喧嘩しそうだ」と言ったよ。 でも 開発チームの協力で、同じ世界にある全く別の曲という感じが出た。

モーションキャプチャーによる繊細な感情表現

www.youtube.com 本作ではモーションキャプチャー・フェイスキャプチャーの技術が取り入れられ、キャラクターの動作や感情表現が非常にリアルに描かれている。撮影風景はドラマや映画さながら。

問題点

特に目立った問題点は感じなかったが、あえて挙げるとすれば以下。

エンドロールに出てくる映像は分岐が考慮されていない

どんなエンディングを迎えようと、エンドロール自体は同じものが流される。ここではゲーム全体の回想的な映像が出てくるのだが、ここは分岐が考慮されていない都合上、自分が選択していない行動をするキャラクターの映像も流されてしまっている。

ゲーム終了後のエンドロールだから目を瞑ることができるレベルではあるが、どうせシーン映像を出すくらいならプレイヤーのとったアクションを反映して、これまでのストーリーを回想させるような作りであれば良い余韻を作り出せたのになぁ、とは思う。

QTE時の選択肢の言葉が抽象的で分かりにくい場合がある

選択時の表現が単語のみ表示されるような形になっており、「そんなはずじゃなかったのに」と感じる箇所もあった。

しかし制限時間付きのQTEで何個も長めの文章を読ませるというのも、それはそれでゲーム体験が悪くなるため、開発側としても色々考慮した上でこのような仕様になっていると推察する。

日本語ローカライゼーションが完全に行き届いていない

ローカライゼーションはかなり丁寧にされている作品だが、細かいところで多少の粗が見られる。

随所で英語で書かれたポスターや書類等を目にすることができるが、視線を合わせても和訳が表示されない。ストーリーの進行には直接関係ないものの、登場人物のバックグラウンドがわかるような書類だったり世界観を構成しているものだったりすることもあるので、やや不親切。